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死亡と相続

■「相続時精算課税制度」のしくみと活用法

相続時精算課税制度とは、自分の財産を自分が亡くなる前に、子供など次の世代にスムーズに渡すためにできた制度です。この制度は、財産の贈与を受けた若い世代の人が消費をすることで、経済が活性化されることを期待して導入されることになりました。

相続時精算課税制度のしくみ

通常、金銭などを父や母から贈与を受けた子は、年間110万円までは基礎控除が適用されて贈与税が非課税になります。これを「暦年贈与」といいます。110万円を超える贈与分には贈与税が課税され、贈与額によって10%〜50%(平成27年1月1日以後は10%〜55%)までの税率が適用されます。
相続時精算課税は、他の贈与財産と区分して、父、母からの贈与について、それぞれ2,500万円の特別控除という非課税枠があります。

特別控除を超えた贈与は一律20%の贈与税が課税され、納税することになります。その後、相続が発生した時に、相続時精算課税によって生前に贈与を受けた財産と、相続によって受けた財産とを合計した価額をもとに相続税額を計算し、すでに支払った贈与税額を控除して相続税を納付します。もし相続税から控除しきれない贈与税相当額があれば、還付を受けることができます。つまり、「相続の時に贈与税と相続税との間の精算を行う」というしくみです。

例えば、3,500万円の贈与を受けた場合には、贈与時に納付すべき贈与税は(3,500万円−2,500万円)×20%=200万円。また、贈与時には、この贈与額(3,500万円)と相続財産を合算して相続税額を計算し、その税額から納付済みの贈与税額(200万円)を差し引いたものが納付すべき相続税額になります。

相続時精算課税制度のしくみ

なお、父母から子が贈与を受ける場合、「暦年贈与」と「相続時精算課税」を併用することができないため、どちらかを選択することが必要です。

具体的な計算事例

相続時精算課税を選択した場合の課税計算について、具体的な例で説明しましょう。
【事例】:父から保有財産のうち3,000万円を、母から400万円を複数年にわたって生前贈与を受けるケース

●1年目
父から1,000万円、母から400万円の贈与を受け、父からの贈与については相続時精算課税を選択する。
(1)父からの贈与
<課税される金額の計算>
 1,000万円−1,000万円(特別控除額2500万円のうちの1000万円。翌年以降に繰り越される特別控除額残高1500万円)=0
<翌年以降に繰り越される特別控除額の計算>
 2,500万円−1,000万円=1,500万円
なお、暦年贈与を選択すると、この年に231万円の贈与税が課税されます。
(1000万円−110万円(基礎控除額))×40%−125万円=231万円

(2)母からの贈与
<課税される金額の計算>
母からの贈与については、相続時精算課税を選択していませんので、2,500万円の特別控除額ではなく、暦年贈与に適用される110万円の基礎控除額を受贈額より控除します。
 400万円−110万円(基礎控除額)=290万円
<贈与税額の計算>
 290万円×15%−10万円=33.5万円
なお、相続時精算課税を選択すると、この年の贈与税負担はありません。
 400万円−400万円(特別控除額2500万円のうちの400万円)=0

●2年目
父から1,000万円の贈与を受ける。
<課税される金額の計算>
 1,000万円−1,000万円(特別控除額2500万円のうちの1000万円。既利用分の特別控除額が1000万円あるので、翌年以降に繰り越される特別控除額残高500万円)=0
<翌年以降に繰り越される特別控除額の計算>
 1,500万円−1,000万円=500万円
なお、この年も暦年贈与を選択すると、この年に231万円の贈与税が課税されます。
(1000万円−110万円(基礎控除額))×40%−125万円=231万円

●3年目
父から1,000万円の贈与を受ける。
<課税される金額の計算>
 1,000万円−500万円(特別控除額2500万円のうち既利用分が2000万円あるので、今回利用できる特別控除額は残高分の500万円))=500万円
<贈与税額の計算>
 500万円×20%=100万円(贈与税額)
なお、この年も暦年贈与を選択すると、この年に231万円の贈与税が課税されます。
(1000万円−110万円(基礎控除額))×40%−125万円=231万円

この例のように、父から3年間にわたり合計3,000万円の贈与を受けた場合、暦年贈与を選択すると合計693万円(231万円×3回)の贈与税が課税されますが、相続時精算課税を選択すると贈与税の合計は100万円と少なくてすみます。ただし、相続時精算課税を選択した場合、贈与者(上記の例では父)が死亡したときの相続税の課税価額に、相続税精算課税制度による贈与額を加算することとなり、加算後の課税価額に対して相続税が課税されます。上記の例では、父から贈与を受けた財産の合計額3,000万円を、父が死亡したときの相続税の課税価額に加算することとなります。

一方、暦年贈与は、相続財産には加算しません。ただし、相続開始前3年以内の暦年贈与は相続財産に加算されます。したがって、相続時精算課税は贈与税の負担は減りますが、相続税の負担は軽減されません。一方、暦年課税は、贈与税と相続税ともに節税効果があります。親の財産を早目に渡したい場合に相続時精算課税を利用するのがよいでしょう。

なお、相続時精算課税を選択した場合、その後の撤回はできません。また、相続時精算課税の特別控除を受けるためには、贈与税の期限内申告が必要です。

「贈与する人」と「贈与を受ける人」の制限に注意

相続時精算課税を利用する場合、「贈与する人」と「贈与を受ける人」には制限があります。「贈与をする人」は贈与を行う年の1月1日において満65歳以上の父、母です。「贈与を受ける人」は贈与を受ける年の1月1日において満20歳以上の子です。養子縁組をした人も対象になります。非嫡出子である子については、認知されていれば選択できます。なお、平成27年1月1日からは、「贈与をする人」について、60歳以上の祖父母とされ、「贈与を受ける人」は子または孫となり適用範囲が広がります。

相続税がかからなければ相続時精算課税を選ぶ

相続財産が少なく、相続税がかからない人ならば、相続時精算課税を選択してどんどん贈与するのがよいかもしれません。特別控除枠は複数年にわたって2,500万円まで利用できるからです。

現在、相続税の基礎控除は「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」とされており、相続財産がこの基礎控除以下であるなら、相続時精算課税でもらった財産を相続時に精算しても相続税がかかりません。しかし、平成27年1月1日以後の相続開始から、基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に引き下げられます。相続時精算課税を選択する場合は、その点もよく理解しておきましょう。

評価額が値下がりする相続財産なら相続時精算課税を選ぶと不利な場合もある

相続税がかかる人は、単純に相続税を減らすだけというなら年間110万円の基礎控除枠を数年にわたって使いながら暦年贈与をしたほうが有利です。また、相続時精算課税を利用して贈与をした財産の相続税評価額は贈与した時点での評価額が基準になるので、贈与財産が贈与時より相続時の方が値下がりしていた場合には、本来納めるべき相続税より高い税金を負担することになるので注意しましょう。