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生活の場面別

死亡と相続

■遺言信託の利用の仕方

遺言信託って何?

「遺言」とか「信託」と聞くと、自分には多額の相続財産がないので無縁と思われる方もいらっしゃることでしょう。確かに、相続は生涯に一度のことですので、一般には関心が薄いことも事実です。しかし、家庭裁判所で行われた遺産分割調停のうち、相続財産5,000万円以下のケースが75%を占めているなど、相続財産が多くなくても相続をめぐって遺族間でトラブルになるケースが増えています。

遺言信託とは、信託銀行が遺言者から財産分与に関する相談を受けて遺言書の作成をサポートし、相続が発生した際に遺言書の内容どおりに遺産整理を行う業務です。

信託銀行が行う遺言信託の内容は

信託銀行が行っている遺言信託の主な内容は次のとおりです。
○遺言書の作成相談
相続財産の確認や遺言書の内容について、遺言者と相談して遺産の分配方法を決めて公正証書遺言の作成をサポートします。
○遺言書の保管
公正証書遺言の原本は公証役場が保管し、正本を信託銀行で保管します。その後、定期的に信託銀行が遺言者に対して相続財産や相続人の状況、遺言内容に変更がないかを確認します。
○遺言の執行手続き
相続が発生したら、遺族に遺言の内容を説明して執行手続きを行います。具体的には、相続財産を調査して財産目録を作成し、預貯金や不動産の名義変更、株式の換金、生命保険金の受け取り、相続税の納付手続きなどを行います。また、遺族が受け取った遺産をどのように運用すればいいかなど、資産運用のアドバイスも行います。
○遺言信託の費用
信託銀行によってまちまちですが、一般的に、
 ・契約時にかかる費用(5〜10万円程度)
 ・遺言書の保管料(年間5,000円〜1万円程度)
 ・相続時の執行報酬(最低報酬100万円程度+相続財産の2%程度)
がかかります。また別途、遺言書作成のために公証役場に支払う費用が10〜20万円程度必要になります。

遺言信託を利用するメリットと注意点

遺言書は15歳以上であれば誰でも自由に作成できます。また遺言書の執行は本来相続人が行うべきですが、場合によっては相続人の利害が対立し、うまく執行できないケースがあります。その点、遺言執行者として信託銀行を指定しておけば、相続人の妨害を受けずにスムーズに遺言を執行することが可能になります。

弁護士や司法書士など個人に遺言執行者を頼むと、その人が先に亡くなった場合などに業務の引継ぎがうまくいかなくなることも考えられますが、その点も信託銀行なら企業の組織で担当するので、そうした心配はありません。

また、相続人が高齢だったり障害を持っているなど、相続手続きが難しい場合や、会社経営者が事業承継する場合など、相続人だけでは手続きが難しいケースでも、実務経験と専門知識に精通している遺言信託なら対応が可能と言えるでしょう。

ただし、子の認知、相続人の廃除などの身分に関する遺言を希望される場合、推定相続人との間で現に紛争を生じている案件、紛争を生ずる可能性が高い案件など、案件の内容によっては遺言信託を受託できない場合があります。

遺言信託の利用を検討するにあたっては、信託銀行で開いている遺言信託セミナーを受講して、各社のサービスを比較するのも一つの方法です。

相続トラブルに関するエピソード

最後に、実際にあった相続時にあったトラブルのエピソードをご紹介いたしましょう。

『母の遺産は、自宅とわずかな預金です。母は生前、2人の子供のうち長男に「自宅を相続させる」と口頭で約束していました。しかし、亡くなる3年ほど前から、介護の世話をしてくれた未婚の妹に「自宅を相続させる」と自筆で遺言書をつくり、その旨を妹にも伝え、自宅の金庫に保管をしていました。
母の死後、母が兄妹それぞれに対して自宅の相続について約束をしていることを知りました。解決のために2人が弁護士のところに相談に行ったところ、兄に対する口約束は法的に無効、妹に対する自筆遺言書も署名捺印が無いなどで法的な効力がないことがわかりました。その後の話し合いでも解決できず、母も兄妹も誰も望まない相続争いが今も続いています。』

以上のようなケースも、遺言信託の利用によって避けられたトラブルといえるでしょう。関係良好であった兄妹関係であっても、相続争いは起こりうるわけです。スムーズな相続の執行のためにも、ぜひおぼえておきたい制度ですね。